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企画したイベントや、行ったライブのレポなどが書かれていると思います。

8.30 〜ふたつの異歌〜 早川義夫と山本精一(早川義夫、山本精一) /梅田シャングリラ

今年の1月、たぶんノイズ新年会のときだったと思うけど、山本さんから「9月に早川さんとやります」という告知があってからずっと楽しみにしていました。自分の大好きな人の歌が同じイベントで聴ける、さらにこの2人が組み合わさることで生まれる「何か」があるのではないかと期待感が募るばかりでした。その後、詳細が出たときにすぐに予約した。

当日は仕事だったんで、少し遅れて到着。20分くらい遅れてしまい、扉の向こうから山本さんの歌声が漏れていました。フロアに入ると、前方のスペースは椅子が並べられ、満席。後方には立ち見の人が何人もいるような盛況っぷりで、自分と同じようにこの2人の組み合わせを楽しみにしている人が多いのだな〜、と感じました。自分は後ろの方で立って観ていました。


山本精一
遅れて扉の奥から聴こえてきたのは羅針盤の「小さなもの」でした。一番といっていいくらい好きな曲に間に合わなかった不幸。泣きそうでした。自分がフロアの中に入ったときにやっていたのは「人形がすきなんだ」。そっと優しい小さな音で、つぶやくように歌う山本さん。歌の世界に入り込もうとして少しずつ目が虚ろになっていく自分を感じながら聴いていました。その後も「飛ぶ人」や「水」、「バケツの歌」など定番曲が続く。そして最後は「夢の半周」でした。

今回は椅子ありだったためか、全体的にゆったりしたセットでした。ステージの上ではうっすらと暖色の照明が山本さんを照らし、譜面を見ながらただ歌う…。MCもほとんどなかった。最前列で体調悪そうにしていた人が気になったのか、「大丈夫ですか?」と声をかけたくらい。曲が終われば譜面をめくり、チューニングを合わせたり、ギター爪弾いたりしながらそのまま次の曲へ。曲のタイトルを言うこともない。ただ淡々と歌い、曲が終われば次の曲が始まる。それだけと言えばそれだけの悪く言えばそっけないライブ。でも、自分にとってはそのそっけなさが心地よかったです。

真夏の夜に白昼夢を見ているようでした。


早川義夫
エントランスにいてたら、中から早川さんの声が聴こえてきて慌てて中に入る。

最初に演奏されたのは「ラブ・ゼネレーション」でした。そのまま立て続けに「純愛」のイントロが鳴る。いきなり大好きな曲が続き、嬉しくなりました。「純愛」はいつ聴いても間奏のメロディーが綺麗すぎて泣きそうになります。

ライブ中盤、少し長めのMC。今回の企画は得三の店長さんの「15周年の記念にライブをやったら?早川さんは若いお客さんが呼べる人と一緒にやるといいよ。山本さんなんかどう?」という言葉が発端になったそう。そこから山本さんに連絡を取り、山本さんが手配してくれて名古屋だけでなく、東京と大阪も決まりましたとなって実現したそうです。山本さん素晴らしいです。そんなエピソードも交えながら始まったのは「猫のミータン」でした。これまでの緊張感溢れる演奏から、跳ねるようなリズムで少しリラックスした演奏が印象的でした。そこから続けて演奏されたのは「父さんへの手紙」でした。この曲は年を重ねるにつれて味わいが増していくような気がします。

で、ライブの後半に演奏された「身体と歌だけの関係」に身震いした。じわじわと忍び寄ってくるようなリズム、「がんがんやって早くあきてね」「歌と身体だけの関係でいよう」という詞が艶かしくて、そして最後の「歌だけがのこる」という詞があまりにも美しすぎて。

そのまま次に演奏された新曲もとてもよかった初めて聴いたから、しっかりと自分の身体に沁み込んではいなかったけど、メロディーの美しさはやっぱり早川さんだな〜と嬉しかった。

早川さんのライブは何度も観ていますが、ソロの演奏は今回が初めてでした。佐久間さんとされていることが多くて、それももちろんよかったのですが、ソロだと早川さんの歌がストレートに聴こえてくるような気がしました。歌詞の生々しさ、身体全体でリズムを取る早川さんの姿、そんな全部が心の中に突き刺さってきて感情が高ぶってきて、目には涙が溜まってくる。素晴らしかったです。


早川義夫山本精一
アンコールではデュオでの演奏もありました。やってくれたのは「この世で一番キレイなもの」、「サルビアの花」、「からっぽの世界」の3曲。前半2曲は山本さんのギターが控えめに絡み、歌に寄り添うようでした。「この世で一番キレイなもの」では早川さんがメインのボーカル。「サルビアの花」では山本さんがメイン。ぼんやりと歌に溶け合う2人の声を聴いていると、お互いに通じ合うものがあるのだなと、だからどちらも大好きなんだと感じました。そして、「からっぽの世界」ではドロドロのダークな世界が広がっていました。まるで、自分が深い海のそこで死体になって揺られているようだった。

さらに、ダブルアンコールでは「埋葬」が演奏され、うっとりと聴き入りながら永遠に続いてもいいと思った時間が終わってしまうことが寂しかった。


大好きな2人の歌をこうやって聴くことができて、言葉で表現することができないような満たされた気持ちになれてとても嬉しかったです。